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何かが足りない定期更新ゲーム雑記中心。 イタい? 中2病? 褒め言葉です。
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   ~Few month before~


それは年末のとある一日の出来事である。

「ジュリアちゃん、ちょっといい?」
「あ、はい、大丈夫です」

源九郎ことジュリア=ティーローズ宅は大掃除の真っ最中であった。普段はひらひらふりふりの踊り子衣装が特徴的なジュリアも、今日は三角巾に割烹着、はたき装備の“お母さん”スタイルで朝から働き回っている。
丁度その時は窓枠に溜まった埃と格闘していたジュリアであったが、“母上”に声をかけられ、作業を止めて窓枠にひょいと腰掛けた。
ふさふさのしっぽを振って、纏わりついた埃を窓の外へと払い落とす。

「なんでしょう母上?」
「書庫の整理をお願いしたいんだけど、いいかな」

とてとてとやって来た女性は、並んで立てば一目でジュリアの血縁だとわかる。それほどに顔立ちや特徴を共有していた。
澄んだ湖水を思わせる毛色と、先端がふわりと広がる髪の質。目尻には色気の象徴、泣き黒子。きめ細やかな玉の肌は、全て“母上”からジュリアへと受け継がれたものである。
一方で毛並みの良い狐の耳と、ふわふわと手触りの良い狐の尾、そして“母上”と比べると一回り二回り貧相な小振りの胸は、“父上”の遺伝であるが――ともかくやって来た彼女は、正真正銘ジュリアの母親だ。

怪しげな術やらなんやらで見た目は十代の頃と全く変わっていないらしい“母上”は、なぜか裸エプロンという姿をしていた。

「あー、“父上”は倉庫の方でしたっけ。じゃあ私がやっておきます」

真冬にそれは寒いだろうとか、突っ込みたいことは山ほどあったが、言った所で聞く耳持たないのは明らかなので、ジュリアは見て見ぬふりをした。
大方は“父上”の趣味だろうが、“母上”の方も乗り気に見えるのだから性質が悪い。下手をするとジュリアまで割烹着をひっぺがされることになる。触らぬ神に、なのである。

「それじゃあ、後で差し入れ持っていくから、頑張ってね」

穏やかに微笑むその姿は、母親というよりは優しい姉のようであった。ただし、その恰好に目をやらなければ、だが。
ともあれこういうやり取りがあって、ジュリアは書庫という名の魔境の整理をすることになったのであった。



(つづく)
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