何かが足りない定期更新ゲーム雑記中心。
イタい? 中2病? 褒め言葉です。
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「せぃ――やッ!」
振り上げた九郎の手から生じた炎は蛇のように大地を這い進み、歩行小岩を包み込む。
「はぁッ!」
見た目ほどの威力はないその火焔は、しかし逃れる間もなく“凍り付き”、動く小岩を氷の中に閉じ込めてしまった。
「こんな得体のしれない生き物に襲われる覚えはないんですが……」
誰にともなく愚痴を吐き出しながら、九郎は昼食を再開した。
“父上”を探し始めてはや数日。一向に成果の出ない九郎は、アテもなく遺跡の内部を彷徨っていた。
かつては一方的に叩きのめされたこともある島の不思議生物たちも、その大半が今の九郎にとっては然程の障害にならなくなっている。
とは言え、見つけたいのは自分の成長のしるしではなく“父上”なのだ。
自分で作ったたまごサンドをもぐもぐと食べるその姿は、ピクニックにやってきたようにしか見えない。
地下であるにも関わらず、適度に雲の混ざった青空が心地よい。
あぶらげのような形の雲をなんとはなしに眺めながら、九郎は穏やかな昼下がりを満喫していた。
――が。
(…………?)
ぼんやりとしていたその瞳が、奇妙なものを捉え一点に引きつけられる。
最初は鳥か何かだと九郎が予想したその小さな黒い点は、半紙に一滴の墨を垂らしたかのように徐々にその大きさを増して行き――
(なッ!?)
“ソレ”が鳥などではなく、落下してくる“何か”だと気付き身構えた九郎の目の前の地面に激突した。
「~!」
叩きつけられるかのような爆音と爆風、砂煙と言うには生温い“砂嵐”の直撃を受け、悲鳴を上げる間もなく九郎の身体はゴルフボールのように勢いよく吹き飛び、木の幹に激突してみしりと嫌な音を立てた。
そのまま死んだ蝉のようにぽとりと地面に倒れた九郎だが、げほっと咳と共に少しばかりの血を吐きながらも立ち上がる。人間ならあの世の景色を眺められるような衝撃でも、妖怪の身には致命的にはほど遠いダメージにしかならなかったようだ。
「っつぅー……なんなんですかもうっ!」
しっぽをばさばさ振り、身体をはたく九郎の眼前にはサイヤ人のポッドでも落ちてきたような綺麗なクレーターができていた。
念のために再び空を見上げた九郎だが、空の落し物が今の一つだけだとするならば、何者かに“攻撃を受けた”可能性は低いと判断し、視線を下ろす。
では一体何が落ちてきたのかと、えぐられた大地の中央を見るとそこには――もちろん、宇宙ポッドがあったわけはないのだが、ある意味ではまだその方がまともと言えるようなモノがそこにあった。いや、そこに“居た”。
(……まさか、人が……?)
未だに砂埃の舞うそこに誰かが立っていた。
冷静に考えるまでもなく、そんなことは在り得ないと思うのが普通だろう。しかし、何度まばたきをしても目を擦ってもその人影は薄れない。なんだこれは、幻覚か、と九郎が自問したのも束の間。
「おいおい、なァーに間抜けなツラぁ晒してんだい?」
唐突に声がした。
「ぅえっ!?」
その声が自分のよく知っている者の声であると九郎が理解したのと同時に、轟ッと風が巻き起こる。
砂埃の吹き飛んだその跡に立つ姿は、九郎が見間違えるはずもない。
「よーぅ! 久しぶりじゃねーか、僕の娘!」
金色に輝く九つの尾。膝上どころか股下数センチという極端に裾の短い緑色の着物を羽織い、しっぽ同様の輝きを放つ短く外跳ね癖のある髪から飛び出た獣の耳。
数日前にあった時と全く同じ笑顔を携えて、何の前触れもなくあっさりと、九郎の“父上”こと玉藻は彼女の目の前に姿を現したのであった。
振り上げた九郎の手から生じた炎は蛇のように大地を這い進み、歩行小岩を包み込む。
「はぁッ!」
見た目ほどの威力はないその火焔は、しかし逃れる間もなく“凍り付き”、動く小岩を氷の中に閉じ込めてしまった。
「こんな得体のしれない生き物に襲われる覚えはないんですが……」
誰にともなく愚痴を吐き出しながら、九郎は昼食を再開した。
“父上”を探し始めてはや数日。一向に成果の出ない九郎は、アテもなく遺跡の内部を彷徨っていた。
かつては一方的に叩きのめされたこともある島の不思議生物たちも、その大半が今の九郎にとっては然程の障害にならなくなっている。
とは言え、見つけたいのは自分の成長のしるしではなく“父上”なのだ。
自分で作ったたまごサンドをもぐもぐと食べるその姿は、ピクニックにやってきたようにしか見えない。
地下であるにも関わらず、適度に雲の混ざった青空が心地よい。
あぶらげのような形の雲をなんとはなしに眺めながら、九郎は穏やかな昼下がりを満喫していた。
――が。
(…………?)
ぼんやりとしていたその瞳が、奇妙なものを捉え一点に引きつけられる。
最初は鳥か何かだと九郎が予想したその小さな黒い点は、半紙に一滴の墨を垂らしたかのように徐々にその大きさを増して行き――
(なッ!?)
“ソレ”が鳥などではなく、落下してくる“何か”だと気付き身構えた九郎の目の前の地面に激突した。
「~!」
叩きつけられるかのような爆音と爆風、砂煙と言うには生温い“砂嵐”の直撃を受け、悲鳴を上げる間もなく九郎の身体はゴルフボールのように勢いよく吹き飛び、木の幹に激突してみしりと嫌な音を立てた。
そのまま死んだ蝉のようにぽとりと地面に倒れた九郎だが、げほっと咳と共に少しばかりの血を吐きながらも立ち上がる。人間ならあの世の景色を眺められるような衝撃でも、妖怪の身には致命的にはほど遠いダメージにしかならなかったようだ。
「っつぅー……なんなんですかもうっ!」
しっぽをばさばさ振り、身体をはたく九郎の眼前にはサイヤ人のポッドでも落ちてきたような綺麗なクレーターができていた。
念のために再び空を見上げた九郎だが、空の落し物が今の一つだけだとするならば、何者かに“攻撃を受けた”可能性は低いと判断し、視線を下ろす。
では一体何が落ちてきたのかと、えぐられた大地の中央を見るとそこには――もちろん、宇宙ポッドがあったわけはないのだが、ある意味ではまだその方がまともと言えるようなモノがそこにあった。いや、そこに“居た”。
(……まさか、人が……?)
未だに砂埃の舞うそこに誰かが立っていた。
冷静に考えるまでもなく、そんなことは在り得ないと思うのが普通だろう。しかし、何度まばたきをしても目を擦ってもその人影は薄れない。なんだこれは、幻覚か、と九郎が自問したのも束の間。
「おいおい、なァーに間抜けなツラぁ晒してんだい?」
唐突に声がした。
「ぅえっ!?」
その声が自分のよく知っている者の声であると九郎が理解したのと同時に、轟ッと風が巻き起こる。
砂埃の吹き飛んだその跡に立つ姿は、九郎が見間違えるはずもない。
「よーぅ! 久しぶりじゃねーか、僕の娘!」
金色に輝く九つの尾。膝上どころか股下数センチという極端に裾の短い緑色の着物を羽織い、しっぽ同様の輝きを放つ短く外跳ね癖のある髪から飛び出た獣の耳。
数日前にあった時と全く同じ笑顔を携えて、何の前触れもなくあっさりと、九郎の“父上”こと玉藻は彼女の目の前に姿を現したのであった。
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