何かが足りない定期更新ゲーム雑記中心。
イタい? 中2病? 褒め言葉です。
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-*-
「…………ぅー」
もぞもぞと身体を動かし、九郎はのそりと身体を起こした。
元々が癖の強い髪はボサリと跳ね、ところどころが逆立っている。寝起きだから仕方がないと言えば仕方がない。
(妙な時間に起きたなぁ……)
時刻はわからないが、少なくとも夜明けはまだ遠そうだった。辺りは真っ暗で、野鳥の鳴き声が聞こえてくる。
水でも飲もうと立った彼女は、一糸纏わぬ姿である。と言っても趣味ではない。単にパジャマがないだけだった。
(夜中に目が覚めるって、すごい久しぶり……)
妖狐の血を引く彼女は夜目が効く。電気も付けずにとことこと歩き、手探りすることもなく蛇口に手を伸ばした。
そして誰にも見られていないのをいいことに、流れる水に顔を近づけそのまま飲む。うつろな瞳で舌を伸ばして水を飲む姿は扇情的なことこのうえない。
水を飲み終え口元を手で拭うと、九郎は再び布団の上に倒れこんだ。
-*-
(…………?)
九郎の意識が再び眠りの海から浮かび上がってきたのは、息苦しさを感じたからだった。
まだはっきりとしない彼女の思考は、その原因が何なのか推測しようとすることさえできなかった。
だが――
「ん、ふ……んむぅ……」
(…………!?)
口の中に感じる甘いぬめりと顔を撫でる熱い吐息は、九郎の意識をアジのように釣り上げた。
カッと目を見開くと、そこには。
「は、母う、ん……ぁン……っ!」
九郎の言葉は続かなかった。その唇を塞がれたのだから無理もない。
誰にも許したことのない、彼女の桜色の唇を奪ったのはあろうことか――
(何コレ!? なんで“お母さん”がいるの!?)
九郎の舌にねっとりと舌を絡めてくるのは彼女の“母上”その人であった。
間近で見るその顔には、実の娘に向ける家族愛とは思えない別の感情、もっとどろどろとして濃厚なモノが満ちている。
普段なら絶対に九郎へは向けられない欲望が、流し込まれた唾液に混ざっていた。
(マズいマズいマズい何なのこの状況!?)
抵抗しようにも力が入らない。恋愛経験皆無の九郎にとって、そういった行為に熟練した“母上”のキスはあまりに刺激が強すぎた。
意識的なすらできないのは、“母上”が全く年の差を感じられない容姿をしているからだ。身体的には九郎の外見年齢よりほんの少しだけ上にしか見えないのである。しかもその姿は、同性でも見とれるほどに美しい。
両手をそっと掴まれて、されるがままに理性を溶かされていく。不思議と恐怖と拒絶が生まれないのは、巧みな技術あってのことなのだろうか。
「んちゅ……はぁ……ん、んんっ!」
「ぁぁ……ふ、ぅン……んむぅ…………ふぁ……」
長い口づけが終わり、そっと唇が離れた頃には、九郎は状況に対する疑問も抵抗もすっかりなくなっていた。
混ざり合った唾液が唇の端からとろりと溢れ、目には悲しみや恐怖から生じたのではない涙が輝いている。
息継ぎもできずにいた反動から、はぁはぁと荒い息を吐く九郎の身体を、“母上”の欲望に染まった瞳が見下ろしていた。その豊満な身体は、当然のように一糸も纏わずほんのりと甘い匂いを放っている。
(あー……まさか、私の初めてがこんなところで、なんて…………でも、まぁ、いいか……)
覚悟を決めた九郎は、“母上”の視線に自分の視線を絡ませた。気がつけば九郎自身も一切の肌着を身につけていなかった。心も身体も準備は既にできている。
その姿を見て優しく微笑むと、“母上”はその手を九郎のふとももに当てて、身体を重ねるようにゆっくりと覆い被さった。
そして、九郎の唇をそっと舐め、一言。
「可愛いです、玉藻さん……」
(玉藻…………ってあれ?)
“母上”が口にしたその名に疑問を抱いた瞬間、九郎の意識は再び闇に落ちた。
-*-
「……………………な、なんて夢を……」
闇の中で目を覚ました九郎は汗だくになっていた。
ドキドキどころではないほどに、胸が激しく震えている。
「…………あー!!!」
今しがた見た夢の衝撃に、頭を抱えて布団の上をごろごろごろ。
なぜあんな夢を見てしまったのかはわからないが、とんでもない内容だということだけはわかっていた。
妙に意識がはっきりとしていた夢だけに、自分があっさりと流されてしまったことが恥ずかしかった。
(目が覚めなかったら、今頃私は……私は……!)
どうなっていたのだろうか。自分で想像して、九郎は更に悶えることになった。
裸で寝ていたのは幸か不幸か。何にせよ、今この姿を誰かに見られれば、彼女は喜んで死を選ぶだろう。
ひとしきり悶え、心身ともに疲れきった九郎は三度布団に倒れこんだ。
(か、感覚が生々しすぎる……)
しかし今度は、身体の火照りが浮き袋のようになってしまって、彼女を眠りの海に沈めない。
(父上は毎晩あんな……って何考えてるんですか私は!)
おそるおそる触れてみた太股の内側がどうなっていたかは、彼女にしかわからない。
(…………うぅ、寝られるわけありません……)
もぞもぞと身体を動かしてみたところで、眠気は一向に訪れなかった。それどころか逆に意識が冴えてくる始末である。
(…………今度母上に会ったら、どういう顔をすればいいんでしょう……)
意を決して九郎はそっと指を舐め、ぴんと伸びた耳の先、しっぽの先まで布団に潜り、そして――
ともかくその夜は、九郎にとってとても長い夜になったのだった。
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