何かが足りない定期更新ゲーム雑記中心。
イタい? 中2病? 褒め言葉です。
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「は!? 戻れないですって!?」
「ああ、無理だ。僕たちは元居た世界の時間に帰れない」
玉藻の開口一番の言葉に九郎は絶句した。
「僕の力じゃ時間の流れを操るなんて芸当はできねーしなぁ」
それがどうしたと言わんばかりの気軽さで、玉藻は焼き鳥串を二本纏めて咥え込む。ここしばらくのところ、野鼠や生魚を食べて過ごしていたとかで、その食欲は九郎の食料貯蔵をゼロにするほどの勢いだ。
「ちょ、ちょっと! じゃあ一体どうするんですか!」
「発情した猫みたいに騒ぐなっての! お前の記憶が確かなら、ここはほんのちょっとだけ昔の世界なんだろ? なら待ってりゃそのうちどーにかなるさ。ヒャヒャ!」
九郎は頭を抱えた。確かに玉藻の言う事は尤もなのだ。
多少の時の流れであれば、操ることのできる知り合いがいないわけでもない。
が、ここにいる九郎ら二人を元の世界の時間軸に戻すには、時間が流れる“過程”を無視し、『結果』だけを“今”と繋げなければならないのだ。早い話がDVDの頭出しのようなことをする必要があるのだが、無理難題もいいところである。
(だからと言って……)
玉藻が口にした唯一にして絶対の解決策は、ただひたすら待ち続けること。
元居た世界とのタイムラグは、年数にしておおよそ三年ほど。1000日ほどを経て、玉藻と九郎が過去の世界に飛ばされたその日に何食わぬ顔で故郷の我が家に顔を出せば、“母上”に無駄な心配をかけることもなく、タイムパラドックスの影響を考える必要もなく、全てが万事収まる……ということは九郎にも理解できる。
気が遠くなるほどの年月を生きる妖狐、玉藻にとってそれはカップラーメンの出来上がりを待つような感覚の時間なのかもしれない。しかし三年という月日はまだ年若く、“人が生きる時間の流れ”の中に在る九郎にとっては重く、長い。
「どうしてこんな事になってしまったんでしょう……」
ちゃぶ台を挟んで向かい合い、親子水入らずの夕食を終えた九郎は猫のようにだらける玉藻に問いかける。一応とはいえ“解決策”が分かりはしたものの、彼女にはまだ腑に落ちない点が数多く残っていた。
「それが僕にもさっぱりわからん!」
しかし玉藻は九郎の最大の疑問をあっさりと切り捨てる。
何らかの原因があることは間違いなさそうだが、玉藻もまた九郎と同じく、自宅の倉庫に入ったと思ったら、何故か見知らぬこの島の地上に立っていたのだという。
普段の言動こそアレだが、その力は大妖怪と呼ぶに相応しい実力を持つ玉藻でさえ感知できなかったということは、九郎には些か信じ難い。
原因が分からない以上、下手をするとまた同じような事が起こる可能性も残るのだ。
「うー、ん……」
考えても仕方ないことは考えないというのが九郎のモットーだが、今回の場合はたしてそれは正しい選択なのだろうか。自問しても答えは出ない。
何しろ聞きたいことはまだまだたくさんあるのだ。
一つは“母上”に貰った時計の事。一つは深夜の時間震動。一つは謎の襲撃者。……山積みである。
「なーに難しい顔してんだ? 笑えよジュリア」
考え事をしていると、ほっぺたをむにゅっと掴まれた。
「何を悩んでるのか知らんが、そういう時は身体を動かすのが一番だと思うぜ」
九郎より遥かに年上とは到底思えない少女の顔に、獰猛な笑みが宿る。
「どうだい、久々に僕が直接ヒヨっ子のお前を鍛えてやろうか?」
九尾の妖狐はまるで獲物を見定めたかのように、ぺろりと舌なめずりをした。
「ああ、無理だ。僕たちは元居た世界の時間に帰れない」
玉藻の開口一番の言葉に九郎は絶句した。
「僕の力じゃ時間の流れを操るなんて芸当はできねーしなぁ」
それがどうしたと言わんばかりの気軽さで、玉藻は焼き鳥串を二本纏めて咥え込む。ここしばらくのところ、野鼠や生魚を食べて過ごしていたとかで、その食欲は九郎の食料貯蔵をゼロにするほどの勢いだ。
「ちょ、ちょっと! じゃあ一体どうするんですか!」
「発情した猫みたいに騒ぐなっての! お前の記憶が確かなら、ここはほんのちょっとだけ昔の世界なんだろ? なら待ってりゃそのうちどーにかなるさ。ヒャヒャ!」
九郎は頭を抱えた。確かに玉藻の言う事は尤もなのだ。
多少の時の流れであれば、操ることのできる知り合いがいないわけでもない。
が、ここにいる九郎ら二人を元の世界の時間軸に戻すには、時間が流れる“過程”を無視し、『結果』だけを“今”と繋げなければならないのだ。早い話がDVDの頭出しのようなことをする必要があるのだが、無理難題もいいところである。
(だからと言って……)
玉藻が口にした唯一にして絶対の解決策は、ただひたすら待ち続けること。
元居た世界とのタイムラグは、年数にしておおよそ三年ほど。1000日ほどを経て、玉藻と九郎が過去の世界に飛ばされたその日に何食わぬ顔で故郷の我が家に顔を出せば、“母上”に無駄な心配をかけることもなく、タイムパラドックスの影響を考える必要もなく、全てが万事収まる……ということは九郎にも理解できる。
気が遠くなるほどの年月を生きる妖狐、玉藻にとってそれはカップラーメンの出来上がりを待つような感覚の時間なのかもしれない。しかし三年という月日はまだ年若く、“人が生きる時間の流れ”の中に在る九郎にとっては重く、長い。
「どうしてこんな事になってしまったんでしょう……」
ちゃぶ台を挟んで向かい合い、親子水入らずの夕食を終えた九郎は猫のようにだらける玉藻に問いかける。一応とはいえ“解決策”が分かりはしたものの、彼女にはまだ腑に落ちない点が数多く残っていた。
「それが僕にもさっぱりわからん!」
しかし玉藻は九郎の最大の疑問をあっさりと切り捨てる。
何らかの原因があることは間違いなさそうだが、玉藻もまた九郎と同じく、自宅の倉庫に入ったと思ったら、何故か見知らぬこの島の地上に立っていたのだという。
普段の言動こそアレだが、その力は大妖怪と呼ぶに相応しい実力を持つ玉藻でさえ感知できなかったということは、九郎には些か信じ難い。
原因が分からない以上、下手をするとまた同じような事が起こる可能性も残るのだ。
「うー、ん……」
考えても仕方ないことは考えないというのが九郎のモットーだが、今回の場合はたしてそれは正しい選択なのだろうか。自問しても答えは出ない。
何しろ聞きたいことはまだまだたくさんあるのだ。
一つは“母上”に貰った時計の事。一つは深夜の時間震動。一つは謎の襲撃者。……山積みである。
「なーに難しい顔してんだ? 笑えよジュリア」
考え事をしていると、ほっぺたをむにゅっと掴まれた。
「何を悩んでるのか知らんが、そういう時は身体を動かすのが一番だと思うぜ」
九郎より遥かに年上とは到底思えない少女の顔に、獰猛な笑みが宿る。
「どうだい、久々に僕が直接ヒヨっ子のお前を鍛えてやろうか?」
九尾の妖狐はまるで獲物を見定めたかのように、ぺろりと舌なめずりをした。
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