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何かが足りない定期更新ゲーム雑記中心。 イタい? 中2病? 褒め言葉です。
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 禊の儀を終えて村に戻り、人々の前で私は静かに言葉を述べた。
 その内容は、ここに記載する必要もないだろう。


 あの後、少女は姿を消した。呆気に取られる私を残し、跡形もなく忽然と。
 全ては夢のようであり、全ては確かな現<うつつ>であった。「せっかくだからとっときな」と押し付けられた手ぬぐいを、私は密かに持ち帰り、自室の中に置いてきた。
 手ぬぐいを取った少女の頭には、作り物ではない獣の耳が二つ。
 少女が何者だったのか、今となっては確かめる術もない。ただ一つ言えるのは、あの子が人ならざる存在であったということ。
 それ以上は考えたところで、想像の一つも浮かばなかった。

 思えば私はこの時既に、今まで生きてきた理由がどうでもよくなっていたのだろう。今日のために私は生きてきたというのに、頭に浮かぶのは全く関係のないことばかりなのだから。


 私は生まれ故郷に別れを告げ、今こうして死出の道を歩いている。

 神が住まうという山には、苔やシダが生い茂り、辺りは湿気が満ちていた。
 絶えず聞こえるせせらぎが、静かな林に染み渡る。朝には騒がしかった山鳥たちは、一体どこに行ったのだろうか。鳴き声どころか羽音の一つも聞こえない。
 木々に覆われ薄暗く、草のにおいの空気は淀みなく新鮮で、そのくせ肌にまとわりつくように湿っている。
 赤、白、黄の色鮮やかな花はなく、目に映るのは緑と茶色、残るはせいぜい灰色くらいである。
 私が歩く小さな道は、山の奥へと続いている。このなだらかとは言えない坂道を、何人の巫女が踏み締めたのだろうか。
 二度と見ることのないだろう景色を眺めながら、時折は足を休めて自然の音に耳を傾けた。


 更に歩き続けることしばらく。私はようやく目指す場所へと辿り付いた。といってもここはその入り口に過ぎないのだが。
 すっかり冷え切った身体で見上げるのは、私の身の丈の二、三倍ほどの高さがある洞窟の入り口だ。夜闇より尚深い闇への玄関口。この先に疫病神が住んでいる。
 もちろん神の姿を実際に見たことはない。しかし一歩その内へと踏み入れれば、そこが異質な空間であるということは誰もが理解できるだろう。
 ここへの道で吸ったものとはあからさまに異なる淀んだ空気。むせかえるような硫黄のにおいには生理的な嫌悪を感じる。

 意を決し、私は一歩、また一歩と闇の奥へと足を進めた。外の光が遠のいて、徐々に足元すらもおぼつかなくなっていく。
 触れた岩の壁は冷たく、表面はぬるぬると湿っている。できることならすぐにでも手を離したいところだが、他に頼るものがない以上、文句を言ってはいられない。洞窟の中が平坦な道だったのは幸運だった。
 足元に気をつけながら、私はゆっくりと前に進む。ぽちゃん、ぽちゃん、と響く水滴の音さえも、今は不思議と頼もしい。視界が無いというのがこれほど心細いものなのかと、今さらながらに私は思った。


 自分が目を開けているのか閉じているのかすらもわからない暗闇を、一体どれほど進んだだろうか。それは唐突にあらわれた。

 闇の中にふわふわ漂う、火花のような小さい光。一瞬錯覚かと思ったそれは、淡いながらも消える様子はなかった。
 微かな光を目指して歩くと、蛍の光のようなそれは、二つ三つと数を増していく。月明かりよりも遥かに弱いが、しかしその光は確かに私の進む道を照らしていた。
 氷のように冷たい壁から手を離し、わずかに戻った視界を頼りに歩いていく。

 やがて開けた場所に出た。そこは私が暮らしていた邸が、そのまま一つ入るくらいに巨大な空洞だった。
 見上げるほど高い天井には、無数の光が秋空を飛ぶトンボのように舞っている。いや、それはよく見るとただの光ではなかった。それは小さな炎だった。
 音も立てずにゆらゆらゆらゆら、松明のように踊る炎が辺りを照らす。
 しめった岩肌は苔むして、かすかに水のせせらぎが聞こえる。それに混ざって響くのは、どこからか吹いてくる風の鳴き声。

 立ち尽くす私の視線は、それらの中央に向いていた。
 うずたかく積もった、なんだかよくわからない燃えカスのようなもの。その丘の上に、きらきらと輝くその姿はあった。
 “ない胸”の前で腕組みをし、えらそうにふんぞりかえった小柄な少女。
 無意識のうちに、私は笑みを浮かべていた。
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